三島由紀夫

長らく日本語で感情を考えないと、言葉を忘れることよりも心情を忘れるスピードが早くなりました。

最近では、ベルギー生活、おもしろかったんだけど、なにがどうおもしろかったんだっけ?と思い返しながら、伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」読んだりしてます。撮影話とかまあおもしろいんだけど、日本語でいってもおもしろくないジョークを全文日本語訳したり、共感できないとこもある。文章のだらだら加減がちょうどいいです。


――――

帰国後、急に読みたくなったものが「三島由紀夫」。
ヨーロッパで見たものの多くは、ゴシック建築をはじめ人工的な美が多かったけれども、なかには写真や一言ではあらわせられない美があったと思う。はっとするような青空など日常的なものから、人には理解されがたいことであったり。
「女神」の美。一番目につきやすく、見てだれもが認めるが、外ばかりに気を取られて芯までは気付きにくい。とってもおもしろかったです。


三島由紀夫「女神」。

女性美を追求し続ける男と妻子のストーリー。美から醜へと転落し夫への憎悪を抱く妻。外見・中身ともに女神の娘。

場面は美娘と父のショッピングからはじまる。娘の服装、持ち物、しぐさ、考え方、すべてに口出しする父。
妻は絶世の美女であった。長い外国生活の中、夫は理想の女性に仕立て上げるため妻の妊娠すら認めなかった。しかし、妻は娘をみごもり、東京大空襲で顔に火傷を負った後は部屋に引きこもり、夫への復讐に燃える。やがて夫は中学生になった娘をみて、妻ゆずりの美しさに気づく。偏執的な美教育がはじまる。品評会の犬のような教育を受け入れる娘。妻娘の人工的な美しさは父によりつくられる。娘は父に反対されながらもけが人をとっさに助けたりと、内面の美しさは自然と形成されていく。最後は失恋・破局・母の復讐を受けて、娘はひとりぼっちになる。失意のどん底の父は娘に許しを請う。ラストは「やっと二人っきりになれたんだわ。」の一言が父の幸福をみたす。父の目には本当の女神に映る。