伊坂幸太郎 『終末のフール』

生きることの意味を考えるのに、生の反対「死」を想定する。
もし同じ場所にいる人がみんな同じ時に消滅すると分かっていたら。

8つの短編物語。全物語に共通の背景は、8年後に地球滅亡すると予告されてから5年。
予告直後は映画「アルマゲドン」のようにパニックに陥った世界も、小康状態にある。
仙台の団地住民たちが終末までのわずかな時間で人生を見つめなおす。自然消滅前に残された時間で何をするのか、生きることの意味は?

崩壊した家庭の再生とか、ボクシングに打ち込む青年とかいろんなストーリーがあるのですが、私の一番おすすめの編は「冬眠のガール」です。
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終末が来る前に急に恋人を作ろうと思い立った少女の話。
両親が滅亡予告直後に自殺して取り残された少女が、家に引きこもり、父親の書斎にある膨大な量の本を読み続ける。4年かけて読破し、スーパーに行った先で偶然会った同級生に「彼氏なしで終末を迎えるのは悲しいよね」というようなことを言われる。よし、作るか、と思い立つ。
父のビジネス書にあった『新しいことをはじめるには、3人の人に意見を聞きなさい』という言葉に習って、彼女は1人目はあこがれの人に、2人目は理解不能な人に会いに行く。
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このストーリーは彼氏探しのためのアドバイスをもらう旅がメインです。彼女の生き方から、終末前というより週末前にやり残してる宿題をみつけて、月曜日までにやるかという気長な感じの印象を受けました。冬眠前の熊さんが栄養を少しずつ貯めていくようなスピードで。
死にたくないと必死にもがこうとする人がいる一方で、限られた時間の中でマイペースにやるべきことをやろうと生きる人がいる。

この本を通じて、
限られた時間・空間の中で、マイペース、マイスペースをつくる過程、それが経験であり、経験の蓄積がひとつの人生なんだなと思いました。
逆にいえば、ひとつの人生があるから、その人がみているモノがあって、立っている空間があって、そこで何かをしていたという時間もある。ひとつの人生を何人分もつなぎ合わせていったら、広がった空間と無限の時間の存在を確認できる。
あれ?よくわからん。考えがまとまらん。今日はおわり!